格闘技の中でも、競技が似ていて混同されるキックボクシングとボクシング
もちろん知ってるよ!という方もキックボクシングとボクシングの発祥の違いまでは知らなかったりするのではないでしょうか
また、これから格闘技を始める方には、キックボクシングかボクシング、どちらを始めた方が強くなれるの?という疑問もあるかと思います
この記事では、キックボクシングとボクシングの違いについて、ルール、歴史、強さなどあらゆる面での違いをご紹介します。
キックボクシングとボクシングの競技(ルール)の違い
大きく違うのはルールです。
まず、攻撃方法を見ると、ボクシングはパンチだけ、キックボクシングはパンチに加えキック・肘・膝という違いがあります。
攻撃対象も、ボクシングは腰から上、キックボクシングはももなど下半身への攻撃も認められています。
ボクシングでももにパンチを打つなどは反則になってしまいます。
もう少し細かくは、接近戦における違いがあります。
両選手が近づいてパンチを出せないほど接近して組み合った場合、ボクシングではクリンチと呼ばれ、繰り返すと反則となる膠着状態と見なされ、レフェリーに引き離されます。
一方、キックボクシングでは、一見ボクシングのクリンチと同じでも組み合った所から首相撲と呼ばれる、肘・膝の当て合いやこかしあいといった、種目としての攻防が存在します。
ただし、近年テレビで見られるRIZINやK-1などのメジャーなキックボクシングイベントでは、見栄えの派手さを重視するため首相撲が禁止されており、ボクシングのようにすぐに引き離される場合も増えています。テレビ中継などの関係で、流血しやすい肘打ちも禁止している場合が多いです。
キックボクシングとボクシングの構えの違い
ルールが違うため、キックボクシング選手とボクシング選手では構え方も実は大きく違っています。
ボクシングの基本的な構え
ボクシング選手の基本的な構えは、左手を顎の前、右手を頬に当てて、体重を前後に4:6程度にかけ、パンチが強く出せるように、やや低重心にします。
クラウチングスタイルと呼ばれたりします。
キックボクシングの基本的な構え
キックボクシングの構えは、両手で三角形を作り、高く構えます。重心は高く、体重はやや後ろ重心にし、前足を素早く動かせるようにします。
この構えはアップライトスタイルと呼ばれます。
キックボクシングとボクシングの構えの違い
まず、重心がキックボクシングは高く、ボクシングは低いです。
これは、ボクシングは強く地面を蹴ってパンチを出すため、キックボクシングは蹴られたときに足を素早く上げてカットするためです。
逆に言えば、ボクシングはローキックを想定していな構えであるため、そのままキックボクシングをするとローキックをもらいやすい構えです。
これがキックボクシングにボクシング選手を呼ぶとローキックをもらいやすい1つの理由です。
次に、ガードの高さです。
ボクシングは体と顔に対応出来るよう、脇を締めて全体を覆います。キックボクシングは高く上げて顔を守ります。
キックボクシングの場合は、ボディへの攻撃は主にミドルキックであり、その場合は腕ではなく足を上げてカットするためです。
最後に重心の前後の割合です。
これは選手の好みやスタイルにもよりますが、ボクシングの方がやや前より、キックボクシングの方が後ろよりな傾向があります。
キックボクシングの場合は前足へのキックが来た場合に前足を上げてカットをするため、全体的に後ろ体重にしているのです。
キックボクシングとボクシングの歴史の違い
見た目が非常に似ているため、混同されやすいのですが、キックボクシングとボクシングはの歴史は大きく違っています。
キックボクシングに至っては実は意外にも日本発祥の格闘技です。
ボクシングの歴史
ボクシングの歴史は非常に深く、紀元前からの古代オリンピックでも行われていました。
元々はルールもほとんどなかったのですが、事故が多発したため、近代に近づくにつれ、グローブが開発され、腰より上の攻撃に限定され、ラウンド制が確立され、体重で階級が分かれるといったように、現在のボクシングの形が生まれてきました。
その歴史の深さから、ボクシングの競技人口は世界中で非常に多く、世界一お金を稼ぐスポーツ選手もボクシング選手(フロイド・メイウェザー・ジュニア)であることからも、愛好家の多さを確認できます。
キックボクシングの歴史
キックボクシングはボクシングとは全く違い、日本発祥の格闘技です。
1960年代にムエタイと空手の対抗戦を行い、当時の空手家が打倒ムエタイのためにムエタイを真似て作り出した比較的新しい競技がキックボクシングです。
その後、K-1などのメディア進出により、ムエタイから危険な技(肘打ち)や地味な技(首相撲)を取り除いたルールを禁止する団体が増えてきています。
新日本キックボクシング協会などは、現在も打倒ムエタイを色濃く引き継いでおり、ムエタイとほぼ同じルールで興行を行っています。
キックボクシングやムエタイの強豪選手がRIZINやK-1に出場して結果を残せない場合には、このような団体ごとのルールの違いも大きいことがあります。
最近だと那須川天心選手に破れた新日本キックの江幡塁や、武尊選手に破れたムエタイのヨーキッサダー・ユッタチョンブリー選手などはそのようなディスアドバンテージがありました。
(もちろんそれが勝敗に直結したかはやってみなければわかりません)
キックボクシングとボクシング、どちらの方が強い?
キックボクシングとボクシングの違いについて、ご紹介してきました。
違いを語るときには、どちらが強いか?について併せて語られることも多いです。
格闘技の場合、種目だけでなく、その熟練度や選手自身の強さにも依存するため、一概には言えないのですが、ルールの少ない戦いになった場合、キックボクシングの技術が仇となってしまう場合があり、総合的にはボクシングの方が有利に働く場合が多いです。
ボクシングと違い、キックボクシングにある攻撃方法は下記などです。
- ローキック
- ミドルキック
- ハイキック
- 三日月蹴り
- 回転蹴り
- 肘打ち
- 膝打ち
- 首相撲
バックハンドブロー
攻撃方法が多いことは、相手を混乱させるオプションが多い事を示しますし、それらの攻撃を受けた場合の対処法も学んでいる点も強みでしょう。
この点ではボクシングよりもキックボクシングに強みがありそうです。
実際に、ボクシング選手がキックボクシングの試合に出た場合には、ローキックに対処出来ずに敗れるようなシーンが多く見受けられます。
ただし、それはキックボクシングルールでボクシング選手とキックボクシング選手が試合をした場合の話です。
例えば、総合格闘技でキックボクシングほど多くのキックは使われません。
その理由の1つは、キックは掴まれやすく、そのまま倒されてしまうリスクがあるからです。
キックボクシングでも掴まれることはあるのですが、倒されてもレフェリーストップが入り、立ち上がった状態で継続されます。
総合ルールの場合には、倒されたらそのままパウンド(パンチ)を落とされ、致命傷となってしまいます。
逆に、キックボクシングの防御技術がタックルのような倒す技術に対応することを考えていないという点も弱みとなる場合があります。
キックボクサーやムエタイ選手が、前足をトントンと上げ下げするような動きを見たことは無いでしょうか。
あの動きもキックをカットするには適しているのですが、足を捕らえられるタックルには絶好の的になってしまいます。
同じく、キックボクシングでは相手を迫ってきたときに片手を伸ばして逆サイドの足を上げるような動きをする場合があるのですが、これも迫ってきたときにこそ組まれやすい状況で非常に危ない体制となります。
このように、キックボクシングでは有効な技術が、ルールの幅が広くなることで弱点となってしまう点がいくつもあります。
総合格闘技でキックが使われにくい理由のもう一つは、グローブの薄さです。
ボクシングやキックボクシングのように分厚いグローブでコンビネーションを打つというよりは、一発を思い切り振って、クリーンヒットをすると大ダメージを与えてしまうという戦いが多いのです。
そのため、よりスピードの早いパンチを多様する傾向があります。それに前述のキックの倒されるリスクも鑑みて、総合格闘技の選手は、キックボクシング+寝技よりもボクシング+寝技を選択するのです。
一撃を先に入れることを重視する実戦では、多くの技を持つキックボクシングよりも、最も速く相手に当てるパンチのみを鍛え抜いたボクシングの方が有利であると言えます。
ボクシングとキックボクシング、ダイエット効果の違い
特に女性が気にされるのは、どちらのほうがダイエット効果があるかという点です。
率直には、運動量ではボクシング、全身のスタイル作りを考えるならばキックボクシングと結論づけています。
単純な運動量では、ボクシングの方が多くなりやすいです。
なぜなら、キックボクシングと比べると動きが限られており、必然で気にスピードの早いコンビネーションを練習することになるからです。(もちろんキックボクシングでも十分な運動量がありますが、比較した場合です)
スパーリングなどでも、キックがあるキックボクシングよりも相手との距離が近く、中々休むことが出来ません。
一方、全身のスタイルづくりであればキックボクシングが有効です。
パンチというのは(精度はともかく)誰でも出来るのですが、キックという動きは意外と難しく、片足で立ってもバランスを取っていられるような体幹が必要になります。
逆に言えば、練習をしていくにつれて、これまで出来なかった動きが出来てくる・体幹が鍛えられるということです。
また、ボクシングと比べて様々な技がある分、上半身だけでなく下半身も多く使うことになります。飛び膝蹴りなどは腿上げ運動のような効果も見込めるでしょう。
以上から、体幹を鍛え、上半身から下半身までバランスの良いスラッとしたスタイルを手にしたいのであればキックボクシングをおすすめします。
まとめ
- ボクシングとキックボクシングの違いはルール・構え・歴史などかなり大きい
- ボクシングとキックボクシングの強さ議論はルールに依存する。総合ルールならボクシングが優位かも
- ダイエット目的であれば、運動量ならボクシング、体型づくりならキックボクシング
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